<<05  2011/06  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30  07>>
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
LSEの試験について【各科目編】
前回に引き続き、今回もLSEの試験について、各科目ごとに振り返ってみたいと思います。

試験勉強をする中で、ようやく各教科や各トピックの有機的なつながりが見えてきたような気がするのですが、ここ数十年の英国(及びヨーロッパ・欧米先進諸国)の社会政策の基本的な潮流は以下のようなもので(これに反対する議論なども色々ありますが)、授業で扱っていた各トピックも、この議論の流れに集約することができるのではないかと思います。

○1980年代以降のネオリベラリズム(新自由主義)への政策シフトと財政危機により、寛容な福祉国家('Golden Age')の終焉と福祉的給付のカットの時代へ(例:サッチャー政権下における公営住宅の民営化など)
○ネオリベラリズム思想下における、ニューパブリックマネジメント(NPM)、分権などの新たな政策手法
○それに伴う諸問題の出現:貧困率や失業率の上昇、格差の拡大、社会的排除など
○労働党政権(1997年~)以降の対策:welfare(福祉)からworkfareへ(労働市場への参加を基軸とした貧困・格差解消策)


以下は、各教科の傾向と対策、及び実際の試験問題についてです。各科目の試験傾向は、引いては学期当初の科目選択にも関わってくると思うので、今後LSEで社会政策を勉強される方がいらっしゃったら、科目選択の際の参考になると幸いです。
試験対策の難易度は、①授業内容と試験問題の関連度、②過去問の傾向、③リーディングリストの内容に左右されると思うのですが、試験本番では、比較的余裕のあった科目で過去問の傾向が変わって焦ったりとハプニングも多かったので、結局はどの科目も手を抜かずに準備しておくことが大切、と痛感しました…。

学期中にはできなかったスタディグループでの勉強も、試験直前には各科目で一緒に勉強する仲間を見つけて過去問の分析や参考文献の共有ができ、これが非常に役に立ちました。特に上記の②の過去問そのものが理解不能な場合(決して英語力不足の問題ではなく、「何を答えて欲しいのかよく分からない」という問題がたまにあります)や③のリーディングリストが大量にある場合などは、スタディグループでの勉強が有効です。


【Social Policy: Goals and Issues】(必修)
試験日:6月1日、評価:試験100%

授業内容と試験問題の関連性が低く、自分でリーディングリストを読みこなさないと試験には対応できないし、かつ過去問を見てもどのトピックに関連しているのかすら分からないような問題もあり、必修でありながら、最も対策が大変な科目の一つでした。

まず一問は、「国内の社会政策は、どの程度国際的な影響に左右されるのか」という問題を選択。これは用意していた福祉国家の変容に関する一般的な流れに関する答案をベースに、ヨーロッパ諸国共通のトレンドや各国の変遷の違いにフォーカスし、Esping-Andersenが述べているように、グローバリゼーションは国内社会政策に大きな影響は及ぼさない、というトーンで回答。
もう一問は、毎年安定して出ていたジェンダーのequalityに関する問題が本命のつもりだったのですが('male bradwinner model family'から'adult worker citizen model family'へ)、ややひねった問題で短時間で構成を練り直すのが難しそうだったので、数日前に急遽用意した、教育政策に関する問題を選択することに。問題自体は、「『equalityの政策目標とconsumer choiceは両立しない』という議論について、一つの社会的サービス分野を選択して回答せよ」というもので、英国と日本の教育政策の変遷を述べつつ、サッチャー政権後以降に「choice」を重視したことが「機会の平等」を損なって格差の拡大を生むことになった点について指摘。教育については、学期中にセミナーでプレゼンしたことがあったので、直前の詰め込みでも何とか勘所がつかめて助かりました。

ちなみに、主任教授のDavid(プログラムの主任教授でもあります)曰く、「日本から来ているのであれば、日本の例を挙げて説明してくれた方がいい。いくつもEsping-Andersenの議論ばかりを見るのはboringだし」とのことです(!)あと、過去問を見返すと「何を思って出題したか思い出せない(!!)」問題もあるそうで、試験勉強する際には、そういうリスキーな問題についてあれこれ考察するよりも、毎年聞かれているような定番の問題をよくよく選んで勉強した方が良さそうです。まあ、Davidは今年で定年退職なので、今後どうなるかは分かりませんが…。


【Social Policy: Organisation and Innovation】(必修)
試験日:6月9日、評価:試験75%、エッセイ25%

本命で用意していたニューパブリックマネジメント(NPM)の本番の問題が、「政策目標が廃止されることは、専門家にとって是か非か」という過去問にはないひねり具合だったので、NPMは諦めて、「リスク」と「パーソナライゼーション」を選択しました。
「リスク」については、「リスクマネージメントはリスクを減らすことができるか、一つの公的サービス分野の例を挙げて論ぜよ」という過去問の傾向どおりの問題で、リスク社会の出現についてと、児童の虐待予防の問題を例に、リスクへの過剰反応がfalse positiveを増加させるとともに、監査システムにより、ハイリスク家庭との関係構築といった質よりも、アウトプット指標が重視されるようになり、それがさらに大きなリスクを生み出すという問題点を指摘。
「パーソナライゼーション」については、「ソーシャルケアのパーソナライゼーションについて、ダイレクトペイメント(障害者などのサービス対象者が直接自分で現金をコントロールしてサービスを選択できるようにする仕組み)などの導入だけでは不十分か」という問題で、選択を付与するのみならず、実際にその「選択権」を活用できるようにするための情報提供体制の整備などが必要、というラインで回答しました。



【Social Security Policies】(選択)
試験日:6月13日、評価:試験75%、エッセイ25%

各トピックの独立性は(Social Policy: Goals and Issuesなどに比べると)高いものの、過去問の傾向が掴みにくく、定番の聞き方以外にひねった問題も多くて、過去問分析に時間がかかりました。そういう意味で、この科目のスタディグループは非常に役に立ちました。(各トピックの定番の過去問について答案のアウトラインを各々が持ち寄って意見交換。さらに、定番以外の過去問についても、質問の趣旨や答え方について、その場で考えて議論する、という形を取りました。)
※ちなみに、「social securityとは何か」については過去記事もご参照下さい。

心配していた割には、本番では意外と回答しやすい問題が出たので、本命の2トピックに関する問題を選択。まず一問目は、social security systemの主要な機能についてと、複数の機能が併存しうるかについて、一つ以上の国を例に述べよというものでした。前半部分は、universalism/selectivism(means-testに基づく)/social insuranceを説明し、後半部分は質問の意図がよく分からなかったものの、英国を例に、社会の変化によるsocial insuranceの後退とselectivismの方向へのシフトについて記述。
もう一問は、labour market activation policies(労働市場参加を促進するための政策)はsocial security systemにとって必要不可欠となっているか、というもの。labour market activation policiesの一つであるtax credit(労働市場参加を促進するための低所得者に対する所得補填)に絞って回答し、即効的な所得再分配として効果的ではあるが、低所得労働の根本的な解決にはつながらないことから、同意できない、という立場で回答しました。


【Housing, Neighbourhoods and Communities】(選択)
試験日:6月10日、評価:試験75%、エッセイ25%

各トピックが相互に関係しているため勉強する範囲が膨大になり、2009年から新たに開設された科目なのでそもそも過去問が少なく、さらにリーディングリストが漫然と大量に列挙されておりどれを重点的に押さえればいいのか分からない、という一番苦しんだ科目でした。ポイントを漏らさないようにするためには、スタディグループでの勉強が必須です。

各週のトピックごとに勉強するというよりは、neighbourhoodとは何か、communityとは何か、social capital(社会資本)とは何かといったような主要なタームの定義を押さえた上で、過去問に合わせていくつかテーマを設定して勉強するのが有効ではないかと思います。(commmunityの衰退/ mixed community/ neighbourhood effect/ home ownership/ 住宅政策の変遷など)他の科目に比べると応用的なやり方ですが、本番の問題に合わせて、いくつかのテーマを組み合わせて書くという戦略です。

一番心配していた割には、本番の問題自体は想定範囲内のもので、本命のhome ownership(英国政府のhome ownershipにフォーカスした政策と、home owneshipのメリット・デメリットについて)及び、有効なneighbourhoodの再生プログラム(これは答え方はいくつかあると思いますが、私はmixed communitiesに絞って書きました。所得や年齢や人種を多様化することによりコミュニティの持続性を高め、発展させようというプログラムですが、その効果については賛否両論あります)について書きました。


【Social Exclusion, Inequality and the 'Underclass' Debate】(選択)
試験日:6月3日、評価:試験100%

一問は、予想どおりの「社会的排除(Social Exclusion)」と「貧困」の概念の違いについて問う問題だったので、社会的排除は社会活動への参加度や、社会資本(social capital)を含むより広い概念である一方で、政策としてはほとんど変わらないという議論を展開。
もう一問は、「雇用と社会的排除」又は「教育と社会的排除」について書く予定だったのに、これが融合した上に、授業で一度も取り上げられていないニート問題と絡めて聞かれたので、準備不足甚だしい保険のさらに保険のトピック、「アンダークラス」を選択しました。この授業の担当教授であるDeanの論に沿って、アンダークラスの提唱者であるアメリカの超保守主義学者Murrayの議論を批判し、アンダークラスの議論は政治的な詭弁であって、真に福祉を必要とする人達へのサービスが行き届かなくなる可能性がある、という主張を展開。


【Measuring Health System Performance】(選択)
試験日:6月6日、評価:試験100%

ヘルスケアの結果の測定方法に関するこの科目では、答案の構成は大体、《(その測定方法の)定義→長所&短所(どういう場合に有効か)→methodological issues(方法論的問題)(+その克服方法に関するサジェスチョン)》という流れになります。

'Patient Reported Outcome Measures (PROMs)'について問う問題は、予想どおり。4つのタイプのPROMs、PROMsの長所(患者の視点から、ヘルスケアのアウトカムを調べることができる)と短所(主観的な測定方法に伴う問題点、時間やコストの問題)及びmethodological issues(信頼性、有効性など)について述べました。
一方、絶対出ると予想していたComposite Indicators(World Health Report(WHO, 2000年))でも使われていた、様々な指標を統合した一つの指標)が一問も入っておらず、焦りました。(他の科目では、大体8~10問の選択肢が用意されているのですが、この科目だけは6問しか選択肢がなく、必然的にトピック絞り込みのリスクが高くなります。)というわけで、もう一問は、予備で用意していた「ヘルスケアのequity」で回答。equal accessとは何か、equal needとは何か、といった点がポイントになります。

この科目は、唯一のヘルス系で他の5科目と比べると異色だったので、他の科目の知識の応用が効かなくて、結局ほとんど丸暗記でした。主要なリーディングリストは限られているし、授業内容が試験勉強にそのまま活きてくるので、勉強しやすいかなと思っていたのですが、結果的には上述のような点がネックになりました。ヘルス系のプログラムの友達が事前に用意した答案をチェックしてくれたりして、ありがたかったです。


以上、長くなりましたが、授業内容や試験問題、試験対策についての参考になれば幸いです。(他にも色々とやり方はあると思いますが、あくまで一つの例としてご参考下さい。)
スポンサーサイト

テーマ : 海外留学
ジャンル : 学校・教育

プロフィール

nomuhisa

Author:nomuhisa
2010年8月より2年間、職場からの派遣により、英国に留学。2010年度は、LSEで社会政策(MSc in Social Policy and Planning)の修士課程を専攻。2011年度は、Bristol大学で公共政策(MSc in Public Policy)の修士課程を専攻。
英国の耳寄り情報があればぜひお願いします!

*主要な過去記事一覧は、「アーカイブ」からご覧いただけます。

最新記事
カテゴリ
月別アーカイブ
リンク
FC2カウンター
現在の閲覧者数:
FC2カウンター
最新コメント
最新トラックバック
検索フォーム
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。