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LSEのdissertation紹介-日本における子どもの貧困問題について-
以前予告していましたが、昨年LSEの修士課程で執筆したdissertation(修士論文)の内容についてご紹介しておきたいと思います。

タイトルは、「What characterises the problem of child poverty in Japan? -Influences of the Japanese welfare state-」(邦訳:日本における子どもの貧困問題の特長は何か?-日本の福祉国家レジームの影響-)というものです。近年、子どもの貧困問題については国内でも注目を集めており、関連する日本語文献も多数出てきていますが、それを福祉国家レジームと関連させて背景事情を深く分析した文献は見られないこと、一方で英語文献については、OECD等の子どもの貧困に関する調査研究では個別の国にフォーカスした分析は行われていないことから、それなりに新味が出せたのではないかと思っています。
なお、リサーチ手法は、独自の調査等は行わず、基本的に文献レビューに基づいています。

以下、dissertationの冒頭に付けているAbstract(概要)の英語版と日本語訳です。


【英語版】

The problem of child poverty has long been omitted from the policy agenda in Japan, while at the same time becoming a special concern in other OECD countries over the past few decades. Nonetheless, the issue is also significant in Japan, where the statistics show a percentage of child poverty higher than the OECD average, furthermore, Japan’s case displays specific features, including a rising poverty rate after redistribution, an extraordinarily high poverty rate among lone-parent households and a heavy educational burden. The fundamental characteristic of the problem of child poverty in Japan is Japan’s unique welfare state regime.

Firstly, the traditional Japanese welfare system consists of powerful occupational welfare, familialism and residual state welfare, which combine to engender a low level of political concern about poverty and children, and the formation of a system of redistribution that is not designed to relieve poverty. The rapid aging of the population and the declining birthrate have also marginalised child poverty within the family policy agenda.

Secondly, labour market dualism, which supports the male breadwinner model and familialism in the Japanese-style welfare system, results in a low wage level for lone mothers, whose employment status has worsened further since the depression in the 1990s.

Thirdly, the concept of residual state welfare also causes a low level of public expenditure on education which, within the context of ‘a society dominated by a quest for academic credentials’, results in a heavy burden being placed on household finances.

This thesis concludes that, in order to reduce child poverty, the Japanese government should reform the targets of redistribution by putting a higher weighting on low-income households with children, reducing labour market dualism and improving the educational environment of disadvantaged children.


【日本語訳】

子どもの貧困問題は、ここ数十年の間においてOECD諸国で高い関心を集めてきた一方で、日本においては長く政策課題として取り上げられてこなかった。しかしながら、当該問題は、日本における子どもの貧困率がOECD諸国の平均よりも高いことが統計で示されているとおり、日本においても深刻なものである。さらに、日本のケースは、①所得再分配後に(再分配前と比べて)貧困率が上がっている、②一人親世帯における異常に高い貧困率、③重い教育費負担、という特徴を示している。こうした日本における子どもの貧困問題の特徴を裏付けるものは、日本特有の福祉国家レジームである。
一点目は、伝統的な日本の福祉制度は、強力な職域福祉、家族主義及び残余的な国家福祉によって成り立っており、これらが組み合わさることによって、貧困問題や子どもの問題に関する政治的な関心が低く抑えられるとともに、貧困の解消を主眼とした所得再分配制度の形成が促されなかったことである。
二点目は、日本型の福祉制度における男性稼ぎ主型モデルと家族主義を支える労働市場の二重性により、母子世帯の母親の所得が低くなっており、さらに、1990年代から続く不景気により、労働市場における母子母の立場が悪化していることである。
三点目は、残余的な国家福祉の理念が、教育に対する公的支出を低く抑える要因となっており、「学歴社会」の中で、家計における教育費の負担が重くなっていることである。
結論として、子どもの貧困を軽減するために、日本政府は、低所得の有子世帯により比重を置くための所得再分配制度の改革、労働市場の二重性の軽減、社会的に不利な立場にある子どもの教育環境の改善に取り組む必要があると考えられる。


下の「続きを読む」をクリックすると、参考文献リストが表示されます。(実際の論文には60個以上参考文献を付けているのですが、長くなってしまうので、最も活用した文献のみをリストアップしています。)

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LSE Graduation Ceremony
早いもので、秋学期も先週で終了です。英国の修士課程の授業や課題等には慣れているはずなのに、それでもやっぱり授業の予習のリーディングに常に追われている状態だし、エッセイを書くスピードが目に見えて速くなったわけでもないし、決してラクではなかった学期でした。それでも、去年と比べると精神的に余裕が出てきたせいか、本当にあっという間に学期が終わってしまったという感じです。学期が終わり、季節が移り変われば、帰国の日も近付いてきているということ。来学期は、ボランティアなど新たなことにもチャレンジして、より充実した日々を積み重ねていければと思っています。

学期が終われば多少の解放感があるはずですが、以前も書いたとおり、今のプログラムは休暇中のエッセイの課題の量が半端ないので(3,500words×3本)、むしろ学期中よりも勉強時間が長くなっているかも…。

そんな中、15日(木)にLSEの卒業式があり、久しぶりにLSEのキャンパスを訪れました。ロンドンにはちょくちょく来ているのですが、LSEを訪れるのは9月以来で、懐かしい気持ちになりました。前日にcertificate(卒業証明書)を受け取り、これのために一年間頑張ってきたんだなぁと思うと、感慨もひとしおです。

卒業式は二日間に渡って行われ、複数の学部ごとにグループ分けされて時間帯が分かれています。私の所属していたSocial Policy学部は、他の2つの学部とともに、15日10時半開始の部でした。会場は、キャンパス内にあるシアターで、周囲は朝からガウン姿の学生やゲストの家族・友人達の姿でごった返していました。ゲスト用のチケットは2枚までなのですが、中国系やインド系の富裕層と思われるファミリーが一族郎党揃って大挙し、「我が一族の誉れ」と言わんばかりに写真撮影している姿は、なかなか圧巻でした。イギリス人の学生達も、一族郎党と言わないまでも、両親や家族を呼んでいるケースが多かったようです。

9月にオックスフォード大学の卒業式に出席する機会があったのですが、格式と伝統に溢れたオックスフォードの卒業式と比べると(何と式の進行はラテン語!まさに中世そのままの雰囲気でした)、LSEの卒業式はモダンで効率主義というイメージ。それでも、一人一人壇上に上がる機会があり、思い出に残る良いセレモニーでした。式の大まかな進行は、以下のような感じです。

○ アカデミックガウンに身を包み、杖を携えた教授陣が入場
○ 教授陣の一人から、開会のスピーチ
○ 一年間のハイライト集のようなスライド(著名人によるパブリックレクチャーなど)←こんなものがあるとは予期していなかったので、ちょっと面白かったです。モダンですね。
○ 式のメイン、学生への学位授与。一人一人名前を呼ばれて壇上に上がり、学長と握手します。優秀な成績(Distinction)やdissertationで賞を取った学生は、長々と「With Distinction, ○○○award, XXX XXX(名前)」などと読み上げられます。私の前後にDistinctionとか何とか賞の学生がいなくてヨカッタ…。
○ 学長(Director)による閉会のスピーチ、教授陣の退場

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開会のスピーチの様子


アカデミックイヤーが終わった直後ならともかく、帰国して仕事を始めた留学生達にとっては再渡英が難しい時期のためか、出席者は圧倒的にイギリス人やヨーロッパ出身者が多かったです。全部で300人ほどいたと思われる出席者のうち、日本人らしき名前は私一人でした。イギリス人が多い私のプログラムでも、出席者は約半数程度でしょうか。
そんな事情を汲み取ってか、式は当日インターネットでも中継が見られるようになっており、本人が出席できない場合や、遠方で家族が来られない場合も、まるで式にリアルタイムで参加しているような感覚が味わえます。留学生の多いイギリスの大学ならではの、良いサービスですね。映像は、式の終了後も一週間程度ネット上で見ることができます。

式の後は、レセプションがあり、クラスメートと近況報告し合ったり(自治体や政府機関で既に働き始めたり、インターン中だったりと、それぞれに順調にキャリアを積んでいる様子でした)、キャンパス内の思い出の場所で写真撮影したり、せっかくアカデミックガウンを着たのでプロのカメラマンに写真を撮ってもらったりと、慌ただしく時間が過ぎていきます。キャンパス内を歩いていると、思いがけない旧友達にたくさん会い、嬉しい再会のひと時を分かち合いました。あと、Student Union Shopで卒業生全員の名前をプリントした記念Tシャツが販売されており、これからLSEを卒業される方にはおススメです☆(もちろん、名前は辛うじて読めるくらいのサイズですが…)

ブリストル大学の卒業式にはおそらく参加できないので、これが多分人生最後の卒業式かも!?と思うと、とても思い出深い記念すべき卒業式になりました。一年間の努力が報われた喜びを、一緒に勉強を頑張った仲間達と分かち合うことができ、幸せな一日でした。‘Keep in touch!’と言って別れたみんなと会える機会は今後ほとんどないかもしれませんが、今はfacebookなどを通じて‘keep in touch’が格段に簡単になったのがありがたいですね。みんながそれぞれの道で頑張りながら、お互いこれからも刺激して励まし合っていければ、と思います。

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アカデミックガウンの後ろ姿

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LSE修士課程の総括
まだLSEの成績が出ておらず、無事に卒業できることを祈るばかりの状況ですが、ここでLSEの修士課程(MSc in Social Policy and Planning)の総括をしておきたいと思います。

一年間の修士課程を通じて感じたことは、LSEの修士課程は、総じて‘tough, demanding’であるということです。元々英国の大学の授業方式は、講義でみっちり教え込む形式の日本の大学とは異なり、自分で文献を読み込んで自分なりの考察を深めるという課程に重点が置かれています。それ故に私のコースでも、1つの科目につき、講義時間(1時間)よりも長い時間(1時間半)のセミナーの時間が設けられていて、一方的に教授が喋る講義よりも、各自が読んできた内容や各自のバックグラウンドを元に議論を展開するセミナーの方が重んじられています。(他の大学ですが、講義が全くなく、セミナーのみでコースが構成されているというケースまであります。)

さらにLSEの場合は、講義で基本的な内容や理論をきっちりオーガナイズして教えてくれるわけではなく、教授陣が自分の関心事項や最新の動向など、特定の内容に偏って話をする場合が多く、教授陣は確かに超一流ですが、周囲でも授業内容に対する不満の声が大きかったのは確かです。(他のコースでは若干事情は違うかもしれませんが、程度の差はあれ似たような状況ではないかと思います。)講義資料をいくら読み込んで暗記したところで、試験には到底合格できるとは思えません。

私のコースはほとんどがネイティブ(又はネイティブに近いヨーロッパ人)だったこともあり、セミナーの議論についていけないこともよくあり、学期中は全体像が掴みきれないままに過ぎてしまったのですが、試験に関する記事でも少し書いたとおり、試験勉強を通じて一年間の総復習をする中で、ようやく全体像が見えてきた感がありました。改めて講義資料などを見返してみて、その授業で扱っていたトピックの意義や全体の中での位置付けがやっと理解できた、というケースもしばしば(こんな面白いテーマを扱っていたのか、と感嘆することも)。興味深いマテリアルを与えつつも、基本的な理論や体系の習得については学生の自主的な学習に任せて、試験のハードルを高く設定することによって、深いレベルでの理解と学生同士の活発な議論を促すという『LSEメソッド』は、特にノンネイティブにはかなり厳しいし不満も生まれやすいと思いますが、最後まで終えてみて、やっと大学側の思いを少し汲み取ることができたような気がします。

学部レベルでのバックグラウンドがあればまだ状況は違ったかもしれませんが、職場経験だけでアカデミックなバックグランドがないままに新たな分野で修士課程を学ぶのは、今振り返ってみてもチャレンジングだったと思います(社会学の基礎的な理論であるagency/structureも知らなかったし、以前も書いたように、social securityの対象範囲を誤解していたという有様です)。他のロンドン大学のカレッジなどと比較しても、LSEの学生は個人主義的でお互い協力し合って勉強するような雰囲気があまりない、と聞いたことがありますが(基本的にそれには同感です)、そういう諸々の状況を含め、私にとっては、LSEの一年間は‘tough, demanding’だったし、それだけに、試験を終えて無事に修士論文を提出した時の達成感・充実感はかなり大きかったです。一緒に勉強する仲間や、息抜きする仲間に恵まれたことに本当に感謝しています。

ちなみに、日本人の留学生仲間の方が、ブログで「LSEの教育の価値」について考察されており、非常に共感する内容だったので、ここで紹介させていただきます。(ご本人の了承済み)
イギリス留学日記「LSEで学ぶことの価値とは何か」


*******************

以下、これからLSEで学ぶ方向けに、自分の反省も踏まえて、学習環境を向上させるためのアドバイス・参考情報などを載せておきます。

○コース選択について
Micaelmas Termの最初にLent Term分の授業もまとめて選択することになりますが、Lent Term分の授業もしっかり調べた上で、cap(人数上限)付きの授業や人気のある授業を優先してアプライしておくことをお薦めします。これらの授業は後からドロップすることはできますが、Lent Termの直前のコース再選択の時期に申し込もうと思っても既に満席というケースがほとんどです。
あと、授業の選択に当たっては、ユニット数や評価方法などもポイントになってきます。試験科目が増えると、試験シーズンが本当に大変なので…。セミナーについては、セミナーリーダーの資質によって満足度はかなり変わってくるので、セミナーの選択に当たってその点も十分考慮に入れて下さい(以前の同じコース履修者から情報を得るなど)。

当たり前のことですが、授業の選択に当たっては、授業のタイトルだけでなく、講師陣や内容についてもしっかり調べるようにして下さい。私は何となくタイトルで判断して選択肢に入れていなかったものが、後から自分の興味範囲内の内容だと分かったり、同じ用語でも日本とは射程範囲が違うことなどが判明したり、「もう少し幅広く調べるべきだったかも」と若干後悔しました。
さらに、これはそもそも入学前に把握しておくべきことでしたが、例年開講されていて取るつもりだった授業が、教授の都合等によりちょうど2010年度に開講されないというアクシデントなどもあったので、要注意です。

○勉強の進め方について
以前の試験に関する記事でも書いたのですが、学期中から試験を意識して勉強することにより、試験前の効率がぐっと上げられます。(リーディングのサマリーを作成しておく、試験で選択する予定のトピックについて重点的にリーディングを行う、スタディグループを作るなど)

○図書館の活用
・図書館で勉強する派の方には、図書館内にあるロッカー利用(有料)をお薦めします。試験前や修士論文執筆中に、重い文献を持って家と図書館を往復するのは大変なので、ロッカーが非常に便利でした。ちょうど今くらいの時期に今年度分の利用の申し込みが始まるはずですが、かなり人気で、申込み開始数時間後には順番待ちになっていました。それでも一週間程度で空きロッカーが回ってきたし、一ヶ月以内くらいに申し込めば十分に可能性はあると思います。図書館内のロッカーが確保できなかった場合は、Old Buildingの地下にもロッカーがあり、ここは自分で鍵を買えば好きなロッカーを使える仕組みになっています。

・あまり知られていないようなのですが、4th floorなど一部のエリアでは、LSE for you経由でstudy spaceを予約できるようになっています。(group study roomの予約と同じ方法です。)予約時間が一日最大6時間と制限があるのですが、図書館が激混みとなる試験シーズンに、例えば朝一番で授業が入っていて席の確保ができない、授業の合間の短時間のみ勉強スペースを確保したい、というような場合には便利でした。


上記のとおり、LSEの修士課程はけっこうハードでしたが、今となっては非常に充実したかけがえのない日々だったと実感しています。またちょこちょことLSEのことが記事に出てくるかもしれませんが、とりあえず今回の記事にてLSE生活に区切りをつけ、次回以降はブリストルの大学生活等について紹介していきたいと思います。


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一番長く時間を過ごした図書館。螺旋階段は見た目にはカッコいいですが、実は移動には不便でした(笑)

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Dissertation提出!
先月後半はdissertation(修士論文)の大詰めに入ったためにブログを書く時間がなかなか取れず、すっかり間が空いてしまいました。ようやく、一年間の修士課程の集大成とも言えるdissertationを提出し、これで全ての課題・試験等が終了したことになります。無事に提出できたという安堵感とともに、ものすごい達成感!(きちんと合格点が取れていれば、の話ですが…。)
以前の記事で、学期中のdissertationの進め方について書きましたが、今回は、6月の試験終了後から9月初旬の論文提出まで、要はdissertationオンリーとなる時期の取り組み方について総括してみようと思います。dissertationの進め方については、以前にも書いたように、プログラムによってまちまちですし、個人の差も大きいので、あくまで一つのケースとして、イメージを掴んでいただけると幸いです。

まず、dissertationには大きく分けて二つのパターンがあります。
①research based:一つ目は、自分でインタビューやアンケート調査等を行い、過去の文献や研究に対して批判的な考察を加えるというもの
②literature based:二つ目は、独自の調査は行わず、過去の文献や研究について分析・考察を行うというもの

修士論文ともなれば、①のように自分でリサーチを行う方がより望ましいと思われるのですが、そもそも一年間の修士課程で6月まで試験がある身としては、試験後の2ヶ月程度の間に自分でリサーチを行って分析して…という作業を行うのはなかなかハードルが高いです。(それを見越して、早めに準備を進めていたつもりですが、いざ本格的に取りかかってみると、きちんと詰めきれていなかったことが判明。)これもコースや語数や内容によって異なってきますが、私のコースの場合は、ガイドラインに①でも②でもどちらでもOKと明記されていたので、②の方法を採りました。感覚的には、15,000wordsレベルになると②だけでは字数が埋まらないような気がします。

それを前提として、具体的には次のような方法で進めました。


【学期中】
以前の記事にも書いたとおり、指導教官と月イチペースでミーティング。基礎となるアイディアをプロポーザルの形でまとめ、参考文献についてのアドバイスなどを受ける。最後のミーティングは3月で、その後は試験勉強に集中していたため、dissertationについてはほとんど取りかかれず。

【7月初旬】
・dissertation作業を再開。指導教官のアドバイス、授業のシラバスにあるリーディングリスト等を基に、ベースとなる参考文献を再度洗い出し。(この段階で、学期中にdissertation用に読んでいた文献量が全然足りていないことに気付き、焦る…。)
・文献を読み進め、referenceとして使えそうな部分を抜粋してまとめておく。日本語で簡単に要約を付記しておくと、後で見た時に分かりやすかったです。

【7月中旬】
・文献を読んでいくうちに、論文の骨格となるアイディアが固まる。(テーマはずっと以前から固まっていたのですが、どういう観点から論じるのかなかなか決めきれず、この段階でようやく論文のコアとなるresearch questionを絞り込むことができました。)
・その骨格を基に、論文全体の流れをざっと日本語で組み立てる。referenceが必要な部分については、上記のreferenceリストから引用。(※2,000語程度ならともかく、10,000語分の論理展開を英語オンリーで組み立てるのは私には難易度が高く、日本語で全体の流れを文章化したことにより、効率的に進められたと思います。ただ、私の場合はテーマが日本についてだったので、この方法が比較的マッチしていましたが、友達の中には「専門用語など全部英語でインプットしているので、日本語で論理展開する方が難しい」という人もいました。個人個人でベストな方法は違うのだと思います。)

【7月下旬】
・日本語ドラフトを基に、英語での執筆開始。
・指導教官が8月は夏休みでコンタクトが取れなくなるため、7月末にその時点でできていたイントロダクションのパートのみを指導教官にメールで送付。追加の参考文献などの有益なアドバイスのみならず、不適切な英語の表現まで修正してくれて、相変わらずの予想以上の熱心なご指導をいただきました。一部だけでも指導教官に見てもらい、内容についてのコメントをもらえたことは、精神的な安心材料になりました。

【8月中旬】
・第一稿が完成。proof readerに校正をお願いする。(プルーフリーディングは、特にノンネイティブにとっては重要ですが(英語表現が不適切であることにより、意味がうまく伝わらなかったりした場合には、その分点数を失うことになってしまうため)、サービスのスピード・価格・クオリティなどの観点から、誰(どこ)に依頼するかが一つの問題になります。私は幸いにも、出願段階から英語チェックをお願いしている方がエッセイの課題なども毎回熱心に見て下さっており、今回も依頼しました。LSEのLanguage Centreでもサービスがありますが、安さ・早さなどを求めて、アルバイトでプルーフリーディングをしている博士課程のネイティブの学生などに個人的なツテで依頼するようなケースもあるようです。)

【8月下旬】
・5日間ほどで第一稿のフィードバックをもらう。その後も2~3回やり取り。(通常のプルーフリーディング・サービスは、一回のみのやり取りなので、複数回やり取りできるのはかなり幸運でした。)
・締切前々日にようやく完成、前日に大学の近くのプリントショップで製本。大学に提出するのは2部ですが、せっかくなので一冊手元に欲しいなと思い、3部作成しました。

【9月初旬】
・製本した2部を大学に提出&オンラインでもアップロード。これにて提出完了!!
ちなみに、提出期限数日前から、図書館でプリンターが使えなくなったり、アップロードのサイトがリニューアルで見れなくなったり、トドメは締切前日にLSEのネットワークが完全にダウンして図書館やLSEの寮でネットが全く使えなくなるというトンデモナイ事態が発生していました。。いやはや、最後まで‘らしい’というか何というか。


ちなみに、修士論文のテーマは「日本の子どもの貧困問題について」。成績が返ってきたら(かつ無事に合格できていたら)、詳細な内容などについても改めてここでご紹介したいと思います。

私は結局夏休みはdissertationだけで提出期限ぎりぎりまでかかってしまいましたが、友人の中には、dissertationの傍らで2~3週間のサマースクールを履修し、さらに論文についても①のパターンでインタビュー等の調査を行っているケースもあったりして、時間の使い方の効率の良さに感心。ともあれ、これでLSEの修士課程はほぼ修了、10月からはブリストル大学の修士課程に進み、Public Policy(公共政策)を専攻する予定です。LSEの総括なども追々書いていきたいと思っているので、引き続きご覧いただけると幸いです。

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LSEの試験について【各科目編】
前回に引き続き、今回もLSEの試験について、各科目ごとに振り返ってみたいと思います。

試験勉強をする中で、ようやく各教科や各トピックの有機的なつながりが見えてきたような気がするのですが、ここ数十年の英国(及びヨーロッパ・欧米先進諸国)の社会政策の基本的な潮流は以下のようなもので(これに反対する議論なども色々ありますが)、授業で扱っていた各トピックも、この議論の流れに集約することができるのではないかと思います。

○1980年代以降のネオリベラリズム(新自由主義)への政策シフトと財政危機により、寛容な福祉国家('Golden Age')の終焉と福祉的給付のカットの時代へ(例:サッチャー政権下における公営住宅の民営化など)
○ネオリベラリズム思想下における、ニューパブリックマネジメント(NPM)、分権などの新たな政策手法
○それに伴う諸問題の出現:貧困率や失業率の上昇、格差の拡大、社会的排除など
○労働党政権(1997年~)以降の対策:welfare(福祉)からworkfareへ(労働市場への参加を基軸とした貧困・格差解消策)


以下は、各教科の傾向と対策、及び実際の試験問題についてです。各科目の試験傾向は、引いては学期当初の科目選択にも関わってくると思うので、今後LSEで社会政策を勉強される方がいらっしゃったら、科目選択の際の参考になると幸いです。
試験対策の難易度は、①授業内容と試験問題の関連度、②過去問の傾向、③リーディングリストの内容に左右されると思うのですが、試験本番では、比較的余裕のあった科目で過去問の傾向が変わって焦ったりとハプニングも多かったので、結局はどの科目も手を抜かずに準備しておくことが大切、と痛感しました…。

学期中にはできなかったスタディグループでの勉強も、試験直前には各科目で一緒に勉強する仲間を見つけて過去問の分析や参考文献の共有ができ、これが非常に役に立ちました。特に上記の②の過去問そのものが理解不能な場合(決して英語力不足の問題ではなく、「何を答えて欲しいのかよく分からない」という問題がたまにあります)や③のリーディングリストが大量にある場合などは、スタディグループでの勉強が有効です。


【Social Policy: Goals and Issues】(必修)
試験日:6月1日、評価:試験100%

授業内容と試験問題の関連性が低く、自分でリーディングリストを読みこなさないと試験には対応できないし、かつ過去問を見てもどのトピックに関連しているのかすら分からないような問題もあり、必修でありながら、最も対策が大変な科目の一つでした。

まず一問は、「国内の社会政策は、どの程度国際的な影響に左右されるのか」という問題を選択。これは用意していた福祉国家の変容に関する一般的な流れに関する答案をベースに、ヨーロッパ諸国共通のトレンドや各国の変遷の違いにフォーカスし、Esping-Andersenが述べているように、グローバリゼーションは国内社会政策に大きな影響は及ぼさない、というトーンで回答。
もう一問は、毎年安定して出ていたジェンダーのequalityに関する問題が本命のつもりだったのですが('male bradwinner model family'から'adult worker citizen model family'へ)、ややひねった問題で短時間で構成を練り直すのが難しそうだったので、数日前に急遽用意した、教育政策に関する問題を選択することに。問題自体は、「『equalityの政策目標とconsumer choiceは両立しない』という議論について、一つの社会的サービス分野を選択して回答せよ」というもので、英国と日本の教育政策の変遷を述べつつ、サッチャー政権後以降に「choice」を重視したことが「機会の平等」を損なって格差の拡大を生むことになった点について指摘。教育については、学期中にセミナーでプレゼンしたことがあったので、直前の詰め込みでも何とか勘所がつかめて助かりました。

ちなみに、主任教授のDavid(プログラムの主任教授でもあります)曰く、「日本から来ているのであれば、日本の例を挙げて説明してくれた方がいい。いくつもEsping-Andersenの議論ばかりを見るのはboringだし」とのことです(!)あと、過去問を見返すと「何を思って出題したか思い出せない(!!)」問題もあるそうで、試験勉強する際には、そういうリスキーな問題についてあれこれ考察するよりも、毎年聞かれているような定番の問題をよくよく選んで勉強した方が良さそうです。まあ、Davidは今年で定年退職なので、今後どうなるかは分かりませんが…。


【Social Policy: Organisation and Innovation】(必修)
試験日:6月9日、評価:試験75%、エッセイ25%

本命で用意していたニューパブリックマネジメント(NPM)の本番の問題が、「政策目標が廃止されることは、専門家にとって是か非か」という過去問にはないひねり具合だったので、NPMは諦めて、「リスク」と「パーソナライゼーション」を選択しました。
「リスク」については、「リスクマネージメントはリスクを減らすことができるか、一つの公的サービス分野の例を挙げて論ぜよ」という過去問の傾向どおりの問題で、リスク社会の出現についてと、児童の虐待予防の問題を例に、リスクへの過剰反応がfalse positiveを増加させるとともに、監査システムにより、ハイリスク家庭との関係構築といった質よりも、アウトプット指標が重視されるようになり、それがさらに大きなリスクを生み出すという問題点を指摘。
「パーソナライゼーション」については、「ソーシャルケアのパーソナライゼーションについて、ダイレクトペイメント(障害者などのサービス対象者が直接自分で現金をコントロールしてサービスを選択できるようにする仕組み)などの導入だけでは不十分か」という問題で、選択を付与するのみならず、実際にその「選択権」を活用できるようにするための情報提供体制の整備などが必要、というラインで回答しました。



【Social Security Policies】(選択)
試験日:6月13日、評価:試験75%、エッセイ25%

各トピックの独立性は(Social Policy: Goals and Issuesなどに比べると)高いものの、過去問の傾向が掴みにくく、定番の聞き方以外にひねった問題も多くて、過去問分析に時間がかかりました。そういう意味で、この科目のスタディグループは非常に役に立ちました。(各トピックの定番の過去問について答案のアウトラインを各々が持ち寄って意見交換。さらに、定番以外の過去問についても、質問の趣旨や答え方について、その場で考えて議論する、という形を取りました。)
※ちなみに、「social securityとは何か」については過去記事もご参照下さい。

心配していた割には、本番では意外と回答しやすい問題が出たので、本命の2トピックに関する問題を選択。まず一問目は、social security systemの主要な機能についてと、複数の機能が併存しうるかについて、一つ以上の国を例に述べよというものでした。前半部分は、universalism/selectivism(means-testに基づく)/social insuranceを説明し、後半部分は質問の意図がよく分からなかったものの、英国を例に、社会の変化によるsocial insuranceの後退とselectivismの方向へのシフトについて記述。
もう一問は、labour market activation policies(労働市場参加を促進するための政策)はsocial security systemにとって必要不可欠となっているか、というもの。labour market activation policiesの一つであるtax credit(労働市場参加を促進するための低所得者に対する所得補填)に絞って回答し、即効的な所得再分配として効果的ではあるが、低所得労働の根本的な解決にはつながらないことから、同意できない、という立場で回答しました。


【Housing, Neighbourhoods and Communities】(選択)
試験日:6月10日、評価:試験75%、エッセイ25%

各トピックが相互に関係しているため勉強する範囲が膨大になり、2009年から新たに開設された科目なのでそもそも過去問が少なく、さらにリーディングリストが漫然と大量に列挙されておりどれを重点的に押さえればいいのか分からない、という一番苦しんだ科目でした。ポイントを漏らさないようにするためには、スタディグループでの勉強が必須です。

各週のトピックごとに勉強するというよりは、neighbourhoodとは何か、communityとは何か、social capital(社会資本)とは何かといったような主要なタームの定義を押さえた上で、過去問に合わせていくつかテーマを設定して勉強するのが有効ではないかと思います。(commmunityの衰退/ mixed community/ neighbourhood effect/ home ownership/ 住宅政策の変遷など)他の科目に比べると応用的なやり方ですが、本番の問題に合わせて、いくつかのテーマを組み合わせて書くという戦略です。

一番心配していた割には、本番の問題自体は想定範囲内のもので、本命のhome ownership(英国政府のhome ownershipにフォーカスした政策と、home owneshipのメリット・デメリットについて)及び、有効なneighbourhoodの再生プログラム(これは答え方はいくつかあると思いますが、私はmixed communitiesに絞って書きました。所得や年齢や人種を多様化することによりコミュニティの持続性を高め、発展させようというプログラムですが、その効果については賛否両論あります)について書きました。


【Social Exclusion, Inequality and the 'Underclass' Debate】(選択)
試験日:6月3日、評価:試験100%

一問は、予想どおりの「社会的排除(Social Exclusion)」と「貧困」の概念の違いについて問う問題だったので、社会的排除は社会活動への参加度や、社会資本(social capital)を含むより広い概念である一方で、政策としてはほとんど変わらないという議論を展開。
もう一問は、「雇用と社会的排除」又は「教育と社会的排除」について書く予定だったのに、これが融合した上に、授業で一度も取り上げられていないニート問題と絡めて聞かれたので、準備不足甚だしい保険のさらに保険のトピック、「アンダークラス」を選択しました。この授業の担当教授であるDeanの論に沿って、アンダークラスの提唱者であるアメリカの超保守主義学者Murrayの議論を批判し、アンダークラスの議論は政治的な詭弁であって、真に福祉を必要とする人達へのサービスが行き届かなくなる可能性がある、という主張を展開。


【Measuring Health System Performance】(選択)
試験日:6月6日、評価:試験100%

ヘルスケアの結果の測定方法に関するこの科目では、答案の構成は大体、《(その測定方法の)定義→長所&短所(どういう場合に有効か)→methodological issues(方法論的問題)(+その克服方法に関するサジェスチョン)》という流れになります。

'Patient Reported Outcome Measures (PROMs)'について問う問題は、予想どおり。4つのタイプのPROMs、PROMsの長所(患者の視点から、ヘルスケアのアウトカムを調べることができる)と短所(主観的な測定方法に伴う問題点、時間やコストの問題)及びmethodological issues(信頼性、有効性など)について述べました。
一方、絶対出ると予想していたComposite Indicators(World Health Report(WHO, 2000年))でも使われていた、様々な指標を統合した一つの指標)が一問も入っておらず、焦りました。(他の科目では、大体8~10問の選択肢が用意されているのですが、この科目だけは6問しか選択肢がなく、必然的にトピック絞り込みのリスクが高くなります。)というわけで、もう一問は、予備で用意していた「ヘルスケアのequity」で回答。equal accessとは何か、equal needとは何か、といった点がポイントになります。

この科目は、唯一のヘルス系で他の5科目と比べると異色だったので、他の科目の知識の応用が効かなくて、結局ほとんど丸暗記でした。主要なリーディングリストは限られているし、授業内容が試験勉強にそのまま活きてくるので、勉強しやすいかなと思っていたのですが、結果的には上述のような点がネックになりました。ヘルス系のプログラムの友達が事前に用意した答案をチェックしてくれたりして、ありがたかったです。


以上、長くなりましたが、授業内容や試験問題、試験対策についての参考になれば幸いです。(他にも色々とやり方はあると思いますが、あくまで一つの例としてご参考下さい。)

テーマ : 海外留学
ジャンル : 学校・教育

プロフィール

nomuhisa

Author:nomuhisa
2010年8月より2年間、職場からの派遣により、英国に留学。2010年度は、LSEで社会政策(MSc in Social Policy and Planning)の修士課程を専攻。2011年度は、Bristol大学で公共政策(MSc in Public Policy)の修士課程を専攻。
英国の耳寄り情報があればぜひお願いします!

*主要な過去記事一覧は、「アーカイブ」からご覧いただけます。

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